つくる人

道南地域の醸造文化を見つめ続けてきたはこだてわいんでは、地酒のひとつとして地元の皆さまに愛されるワインをつくることで、函館・道南の食を支えたいと願っています。近年には自社農園でのブドウ栽培を手掛けることで、当社のワインづくりは新たなステージへと歩みを進めました。醸造・栽培スタッフそれぞれが一つひとつの仕事と真摯に向き合いながら、ワインにおける北海道らしさ・函館らしさの表現に挑戦しています。

栽培

金子 由紀子

金子 由紀子(かねこ ゆきこ)

製造部 原料調達課 栽培担当

2023(令和5)年入社。三重県よりワイン造りにあこがれ移住。余市町のワイナリーでの栽培経験を経て当社に就職。

  • ワイン造りはブドウ栽培から

    横津の山々の西麓、“日本の西洋式農業発祥の地”といわれる七飯町は、古くから果樹栽培が盛んな土地です。はこだてわいんでは2017年に自社圃場を開き、シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンなどのブドウ品種を育てています。この辺りの気候は暑すぎず寒すぎず、本州と比べて6~7月の降水量が少なく、ブドウが登熟する秋の期間が長いので糖と酸のバランスが良いブドウに仕上げることができます。また、冬の積雪も少ないことから冬場の作業もしやすいのも有利な点です。
    私は北海道でのワイン造りに憧れ、2021年に三重県から移住しました。ワイン造りにはブドウ栽培が重要であることを教えられ、まずは栽培を極めようとしています。今は長年北海道でブドウ栽培をおこなってきた田村農場長の指導のもと、ブドウ栽培を学んでいます。木の健康を気づかいながら育てる日々です。余分な芽を摘んで果実の成長を助けるとともに日当たりと風通しを良くし、病気や虫害の兆候をいち早く察知して対処しなければなりません。常に圃場全体をくまなく観察するよう努めています。

  • ブドウの育つ様子が愛おしくなる

    自然が相手ですから思い通りにならないこともしばしばです。最初の頃には、実ったブドウが鳥の大群に食べられてしまうような苦い経験もありました。丹精込めた木に小さな房がつき始め、だんだんと育つ様子を見ていると我が子のように可愛く思えます。秋、ブドウがいよいよ熟してくると、ワインの仕上がりをイメージしながら収穫適期を見極めます。例えば函館の海の幸を使った料理に、すっきりと酸を効かせたシャルドネなどを合わせて飲んでいただきたいですね。世界中の品が容易に手に入るいま、あえて地域の中でブドウを作り醸造し、飲んでいただくことには他に代えがたい価値があると思います。観光で訪れる方々にも、道南の食とワインを一緒に楽しんでいただけると嬉しいですね。
    私たちのブドウ栽培はもう少し年月をかけ収量を上げていく必要がありますが、世界的にも注目される道南のワインづくりの一翼を担うヴィンヤードに育てることが、私のライフワークとなりそうです。

醸造

西村 真

西村 真(にしむら まこと)

製造部次長・醸造責任者

1998(平成10)年の入社以来、一貫してワイン醸造を担当。2009年より醸造責任者に就任。

  • ブドウのポテンシャルを引き出す責任

    “ワイン作りは農業である”、“品質の7割はブドウの出来で決まる”と言われます。仮に醸造段階でできることが残りの3割だとして、ブドウの持ち味をどこまで引き出すことができるのか、私はそこに醸造家としての責任とやりがいを感じています。
    当社は主に余市町の契約農場などで収穫された原料を元に醸造を行っています。ブドウの産地や品種ごと、さらに七飯町特産のリンゴを使ったシードルなどを含めると、50種類ほどの銘柄を作っています。自社圃場におけるブドウ生産も軌道に乗り始め、数年前から商品をリリースできるようになりました。ワイン醸造で一番に求められるのは、ブドウが秘めるポテンシャルを最大限に引き出すこと。北海道のテロワール、気候風土を余すことなくボトルに詰めて、「これが北海道、函館の、七飯のワインです」と胸を張れるものを作っていきたいです。

  • “食×醸造”の文化を地元で育てたい

    大切なのは果汁を含む果肉や果皮、種などからバランス良く香りや渋みなどの味わいを引き出し、なおかつ雑味の無いクリアーな果汁を得ること。その年、その時のブドウの出来を見ながら一つひとつの工程にかける時間の管理や緻密な温度管理、発酵に使う酵母の種類など、作戦を立てて丁寧に進めていきます。手掛けたことのない品種にチャレンジするときはワクワクしますし、作戦が成功しイメージ通りの仕上がりになった時は嬉しい瞬間です。
    道南地方は農業、漁業、畜産、酪農とあらゆるものが揃う食材の宝庫。そこにいま、様々な酒造りが盛り上がりを見せています。私の使命は皆様においしいと言っていただき、地元の誇りになるようなワインを作ること。函館の食とワインの文化は、まだまだ伸びしろがあるはずですし、身近な地酒としてワインを楽しむカルチャーが根づくことを願います。私たちは地域と一緒に成長するワイナリーでありたいと思います。