はこだてわいん×ハコダテアンチョビ
~生産者対談~

地域の生産者が思い描く道南の未来

CHAPTER 03 作り手としてのこだわりと、
お互いの商品に対する印象

―おふたりが商品を作る上で大切にしていることがあれば教えてください。

齊藤さん
ハコダテアンチョビに関して言うと、もともとが悲しい思いをしている人を救うための企画だったので、事業とは思ってないんですよね。困っている人を助けることに喜びを感じていて、お金は儲かっていないけど、心は満たされていくという。漁師さんや水産加工業の方が豊かになるためにやっている活動が、自分を豊かにしてくれるという感じです。
だから、イワシがとれなくて商品が作れなくても、慌てる話じゃないんですよ。事業だったら、原料不足って深刻な問題だし、資金繰りの面でも焦りますよね。でも、我々はそういうスタンスではなく、とれたのに売り先がない状況を解決したいという考えがベースにあります。決してお金を稼ぐための事業ではないので、そこはブレずに続けていきたいですね。
渡辺さん
うちの会社としては、当然ですけど安心安全を徹底しています。その上で、「買って失敗した」と思われるワインは作らないようにしています。ワインって安いものではないので、失敗したくないじゃないですか。だから、我々の商品は価格以上の味わいを提供できるものでなければいけないと思っています。日常的に飲んでいただけるものと、ワイン業界でも評価をいただけるもの。ワイナリーにとっては、両方を作っていくことが大事なんですよね。

―実際にハコダテアンチョビを食べてみて、渡辺さんはどのような印象をお持ちですか?

渡辺さん
他のアンチョビと食べ比べてみたんですけど、身が柔らかくて油の美味しさを感じました。濃厚な味わいですよね。外国産のものと比べて塩味もキツくないし、いろんな料理に使えそうだなという印象です。
齊藤さん
僕らがこだわっているのは熟成なんですよね。国産のアンチョビって熟成がしっかりしてないものが多くて。渡辺さんがおっしゃってくれた通り、熟成が進むとタンパク質がアミノ酸に変わって、身質が柔らかく、ねっとりした食感になっていきます。さらに熟成するとペースト状になるんですけど、その前の段階の美味しい状態で食べていただいてるので、旨味が強く、奥深さを感じてもらえると思います。ちょっと舌にのせるだけで、旨味が広がっていくんですよね。

―ワインとのペアリングという観点では、いかがですか?

渡辺さん
ガーリックが乗っていて、ハチミツをかけて食べるピザがあるじゃないですか。ああいうのにちょっとアンチョビをつけると美味しそうですよね。ペアリング的には、甘味のあるワインとの相性がいいと思います。ブルーチーズの代わりになるような気もしますね。
齊藤さん
アンチョビってソースやペーストにするだけじゃなくて、前菜としても食べるんですよ。生のトマトやチーズの上に乗せたりして。そういうふうにして食べるアンチョビは、塩辛さや味の強さが全面に出るので、甘味のあるワインと合わせたいですよね。

―齊藤さんは、はこだてわいんについて、どのような印象をお持ちですか?

齊藤さん
はこだてわいんと言えば、ジューシーかつフルーティーなものを得意とするワイナリーというイメージですね。キャンベルアーリーなんかは圧倒的に個性があって、チャーミングなワインですよね。そういうカジュアルな商品がある一方で、『年輪』のように料理に寄り添うワインも作っている面白いワイナリーだなと思っていました。全体的には、北海道らしい仕上がりのワインが多いですよね。

―「北海道らしい仕上がり」というのは、具体的にどのような特色なのでしょう?

齊藤さん
チリとか南アフリカとか、暖かい地方のワインって、ガッツリした味わいで、渋みもあるじゃないですか。北海道のワインはそうではなくて、ドイツやフランスで作られている繊細、きれい、穏やかといったイメージに近い味わいだと思います。
渡辺さん
うちでは大きく分けて3つのシリーズのワインを作っています。ひとつはキャンベルアーリーやナイアガラなどのカジュアルライン。次にメルローなどを使用したレギュラーライン。最後が道産原料にこだわったプレミアムラインです。これらすべてのワインがGI北海道(北海道のブランドを保護し、知的財産として国に登録する制度。道産ブドウのみを原料とするほか、各種の化学的分析や官能検査に合格する必要がある)にも認定されています。
CHAPTER 04

ワインとアンチョビから
考える道南食文化の未来